生活福祉資金貸付制度とは

「生活福祉資金貸付制度」は、低所得世帯、障害者(身体障害者、知的障害者、精神障害者)世帯、または高齢者世帯に対し、必要に応じた資金貸付を行うとともに、民生委員を通じ必要な援助指導を行うことによって、その世帯の経済的自立と生活意欲の助長促進、加えて在宅福祉・社会参加の促進を図り、安定した生活が送れるようにすることを目的とした制度です。

本制度は、「世帯更生資金貸付制度」という名称で、昭和30(1955)年度、低所得世帯等に対し当該世帯の経済的自立と生活意欲の助長促進を図ることを目的として誕生し、創設時は、生活保護法の生業扶助と同一範囲の費用(生業費、支度費、技能習得費の3種類)について貸付けを行っていました。
そして、これまで半世紀近くの時を経るなかで、本制度は、社会情勢の変化等を見据え、時代の要請に即応した資金種類の充実を図る改正を行ってきました。また、大災害時や炭坑離職世帯、カネミ油症やスモン患者世帯、国民年金特例給付等の緊急に対応が必要な貸付けにも柔軟に対応してきた実績もあります。

つまり、創設時には、当時まだ膨大に存在していた低所得およびボーダーライン層が貧困の素であり自立した生活を営む障りとなる要因を除くためというニーズに、主として生業資金をもって対応しようとした低所得者福祉対策として位置づけられていた観点から、生活全般を視野に入れた、在宅福祉・地域福祉をより一層推進するための一助として用いる制度という観点へと発展してきているのです。

それは本制度を実施する都道府県社会福祉協議会が地域福祉を推進する役割を担っていることに起因することでもあります。この制度を推進する都道府県社会福祉協議会に求められているのは、資金の貸付けという方法論をとりながら地域住民の福祉を実現することであると言えましょう。

こうした背景もあり、平成2(1990)年度には「生活福祉資金貸付制度」と名称変更されました。

(1)生活福祉資金が「貸付制度」であることの意義

本制度はあくまで、給付ではなく貸付けという形態をとっています。
資金貸付とは、そもそも、所得保障、現物給付、サービス供給とならぶ社会福祉の重要な「手段」であって、何か特定の対象や問題を予め前提としているものではありません。

この「貸付」という手段が所得保障やサービス供給、現物給付などの方法と異なるのは、資金を利用する借受人の「主体性」を最も重んじ、そのことに依拠した福祉であることです。

直接福祉ニーズを満たすサービス供給や現物給付ではなく、借受人への信頼と主体性重視の土台のうえに成り立ち、かつ償還を伴う貸付けであるという点は、借受人が自らの課題やニーズを、借受けた資金を自立生活のために活用することや計画的に償還することを通して、自らの意思と努力によって成し遂げる過程を重視するに適った方法であると言えましょう。

経済性や自立性を担保しながら借受人の主体性を重要視する福祉施策であるわけです。本制度が給付制度ではなく貸付制度であることの趣旨はここにあります。

(2)生活福祉資金貸付制度は「地域福祉の一社会資源」

地域福祉に求められるものは、低所得者層に対しても高齢者や障害者、子育て家庭に対しても、そのニーズを満たすだけの福祉を実現する手段が地域に「資源」として様々に存在することであり、また、おのおのがもつ希望やその折々の生活状況によって適切な手段や方法を選択して問題の解決にあたることです。

資金貸付制度は、地域住民の生活を豊かにする方策の一つとしてあるわけですから、社協がもつ「資源」であるわけです。

しかもこの制度は、「貸付-償還」というサイクルで運用され、一定の財源を地域住民が繰り返し利用できるという重要な意義をもつ方策です。

(3)生活困窮者自立支援法について

生活困窮者自立支援法とは、平成27年4月から施行され、全国の福祉事務所設置自治体が実施主体(委託も可)となって、複合的な課題を抱える生活困窮者に対する包括的な相談支援や就労支援が実施されます。

この法律の施行に伴い、生活福祉資金貸付制度はこの制度と連携して相談者の自立に向けた支援を行っていくこととなります。

■生活困窮者自立支援制度の具体的な内容はこちら (厚生労働省ホームページ 外部リンク)